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元々朝飯を食う習慣のない俺は、早速朝からほとほと疲れ果てることになる。
誰だよ。一日を三食って決めたやつ。
自分一人ならば平気で抜こう。姉貴や兄貴でも、「勝手に食って」の一言で済ます。
しかし、相手が大事な大事な預かり者では無下にもできまい。
しかも、成長甚だしい少女であるのなら尚更。
眠い目をこすりこすり、停止したままの脳をなんとかたたき起こして悩み尽くすと、そうだそういえば、この間姉貴が置いてった食パン一斤があったじゃん。
あやふやな記憶を手繰るも、たどり着いた食材は、見た目変わらないまでも、すっかり賞味期限が切れていた。
てか、パンってこんなに日もちしないもんか。
ちらと背後を見る。
お行儀よく、紅のフレアスカートを着込み、人気キャスターが読み上げる朝の経済情報を眺めている少女は、ううむ成る程、流石に育ちがいい。
あの何割を分かっているのやら。
再びパンのパッケージを見遣る。袋のなかに汗をかいているパンは、絶対的に変化はない。
…………まぁいいか。賞味期限って、美味く食べられる保証期間であって、実質食べられる期間はも少し長いって言うし。
何度となく切れた食材食わされようと、すくすく育った証明はここにいるし。
賞味期限が切れたものなど口にしたことがないであろうお嬢様用にパッケージを開け、皿に盛り合わせ始めた。
本日のメニューは、パン、そしてパン。なんと、メインディッシュは賞味期限切れの生パンです。
ある意味話題の偽装表示かしらん? と考えつつも、誰にばれるわけでなし。
あーぁ、ちょっとしけってらぁ。
我ながらいい加減すぎる朝食だろ。まぁいい、明日からは真面目にやろ。
カラフルな海になっている居間も、嗚呼もうここも掃除しなきゃなぁ、足を踏み入れたと同時、少女が丸く大きな瞳を振り向けた。
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