21人が本棚に入れています
本棚に追加
「どっちが勝ってる?」
テレビ画面の内容を問う。普段ならしないことも、やはり身に迫った問題となれば気にかかるものか。
「あっち」少女は、再びテレビへと目を向ける。
「北が危ないんだって。もうちょっとしたら、東と切り離されて、囲まれちゃうの」
「……詳しいな」
「ママンが見て、教えてくれたから」
予想を超えた答に、目を見張る。おいおい、お前ホントに小学生か? それとも、お嬢だから頭がいいのか。そうかそうか。
ん? 母親?
「そういや、お前母親はどうしたよ。杉島教授……じぃさんに預けられて来たんだろ?」
「うん、おじいちゃん、貴方のこと馬鹿だけどお人よしって言ってたよ」
「馬鹿……」
「ママンは、とっても大事な用があるの。だから、おじいちゃんのとこにいなきゃなの」
「……そっか、大変だな」
「大人程じゃないの」
心底同情しかけたのもつかの間、またしても驚きのカウンターパンチがとんできた。だから、このちびっこは、何処でそんな台詞を覚えてくるぅ!
「大人はね、とっても大変なの。ご飯のために嫌なことさせられたり、嫌いな人とも仲良くしたり、戦争しなきゃいけなかったり」
「それも、ママンが言ったこと?」
「そう」
ははぁん、こいつの人格形成は母親のおかげだな。
「多分、ママンはまた逃げてるんだと思うの。次は、水月は置いてくからね、って、泣いてたから」
「……お前の母ちゃん、何者よ」
「ママンは、戦争学者」
「戦争学者ァ?」
「戦争に反対したんだって。周りはそんなことしなくてもいいじゃない、って笑っただけだったんだけど、一部の人……? には、それが嫌だったみたいで、国を大切にしないのか、って追い回されてたの」
恐らく、そういった団体に狙われたのだろう。命までかは分からないまでも。
「ママンはね、間違ったことはしてないんだよ。でも、警察も守ってくれないから、逃げるしかないの。前はね、水月も連れてってくれたんだけど、学校とか、可哀相だから、っておじいちゃんとこに来たの。名前も、おじいちゃんの方にしとけば、きっとばれないから、って」
最初のコメントを投稿しよう!