開き始める引き出し

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「なん、で、キス、したの……?」 あの後、観覧車の中でも降りてからも、ハル君は無言で。 手は繋がれたまま、黙っている。 その雰囲気に耐えきれなくなって、私から聞いた。 「………別に。意味は無い。 しいて言えば、予行練習?」 「よこう、れん、しゅう……?」 「そ、予行練習。一度経験しとけば、 本番の時に、戸惑うこと無いでしょ。 あ、その時は、ちゃんと目を閉じた方が いいよ。開きっぱだったから。 かおるさん。」 そして、スッと繋いでた手に離す。 あ。まただ。 また、かおるさんに戻った。 態度も、今のハル君になった。 ファーストキスだったのに、とか。 突然されて、目閉じれる訳ないじゃん、とか。 言いたいことは、たくさんあったのに。 ハル君の早い態度の変わりように。 少なからず、ううん。酷くショックを受けている自分がいる。 ────あの時と、同じだな。 また、ハル君は、私に対して、壁を造った。 だから、私も。 「………分かった。 今日は、楽しかった。ありがとう。 ……………ハル君。」 無理やりにでも、戻すしかなかった。
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