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希の唇は今日もツヤツヤでとても可愛い。
その唇が開いて、いつもより少し低い声でその話題は切り出された。
「ねえねえ、ウチ、出るのかも……」
「出るって?」
「出るって言ったら幽霊じゃない!」
希が言い切ったところで、うっかりあくびが出た。
最近、どうも寝不足でいけない。
「ちょっと!!ちゃんと聞いてる?」
膨らませた頬がまた可愛い。
「ごめんごめん、聞いてるよ」
「彼と別れたばかりだから、こんなこと相談できるの雄一しかいないの」
友達にもできるだろうに、そんな風に言って僕に相談してくるところもたまらなく愛しい。
あれ?でも今は友達とはケンカ中だっけ?
「はいはい、で、なんだって?」
「昨日ね、遅くに目がさめたの。そしたら、かすかに足音が聞こえてきて、少しずつ近づいてくるのがわかるの!」
「で、幽霊を見たの?」
「怖くて目なんか開けられないわよ!」
希は実家が地方で、今は一人暮らしだから家族や同居人という可能性はない。
「空耳か夢でもみてたんじゃない?」
「絶対空耳でも夢でもないー!」
希は不服そうに唇を尖らせて、僕を上目遣いで睨む。
そんな可愛い顔で睨まれたって、ちっとも怖くない。
希は諦めたようにため息を1つついて切り出した。
「だからね、今日泊まりに来てくれない?」
「…さすがにそれはどうなの?」
「雄一だもん!何もしないでしょ?今さら」
希の表情を注意深く観察するが、本当に何の心配もしていないように見える。
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