第2回 お題 「足音」

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希の唇は今日もツヤツヤでとても可愛い。 その唇が開いて、いつもより少し低い声でその話題は切り出された。 「ねえねえ、ウチ、出るのかも……」 「出るって?」 「出るって言ったら幽霊じゃない!」 希が言い切ったところで、うっかりあくびが出た。 最近、どうも寝不足でいけない。 「ちょっと!!ちゃんと聞いてる?」 膨らませた頬がまた可愛い。 「ごめんごめん、聞いてるよ」 「彼と別れたばかりだから、こんなこと相談できるの雄一しかいないの」 友達にもできるだろうに、そんな風に言って僕に相談してくるところもたまらなく愛しい。 あれ?でも今は友達とはケンカ中だっけ? 「はいはい、で、なんだって?」 「昨日ね、遅くに目がさめたの。そしたら、かすかに足音が聞こえてきて、少しずつ近づいてくるのがわかるの!」 「で、幽霊を見たの?」 「怖くて目なんか開けられないわよ!」 希は実家が地方で、今は一人暮らしだから家族や同居人という可能性はない。 「空耳か夢でもみてたんじゃない?」 「絶対空耳でも夢でもないー!」 希は不服そうに唇を尖らせて、僕を上目遣いで睨む。 そんな可愛い顔で睨まれたって、ちっとも怖くない。 希は諦めたようにため息を1つついて切り出した。 「だからね、今日泊まりに来てくれない?」 「…さすがにそれはどうなの?」 「雄一だもん!何もしないでしょ?今さら」 希の表情を注意深く観察するが、本当に何の心配もしていないように見える。
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