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希とは同郷どころか小学校から現在大学までずっと同じ学校だったために、希はそんな風に認識しているのだろう。
だが実際には小・中・高とクラスも人数もそれなりにあったから、僕と希は大学に上がるまではそれほど親しくはなかった。
首都圏にあるわけでもないこの大学に入ったのは、僕らの高校からは僕と希だけだった。
大学で初めて会った時、希がとても嬉しそうに話しかけてきたことを、僕はしっかり覚えている。
「うそー!笹倉くんもこの大学なの?全然知らなかったー!!」
別に僕と同じ学校で嬉しかったわけではない。
希は少々人見知りなところがあったから、見知った顔に安堵したのだ。
「僕も全然知らなかったよ。」
「学部は?え、そうなの?学部まで一緒なんて、高校で気付かなかったのが不思議なくらいだね。4年間よろしくね?」
それまで向日葵のように潔く華やかで半ば力強さすら感じると思っていた希の笑顔は、近くで見ると朝顔のように儚げで純情だと僕は思った。
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