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「雄一、ベッド使いたい?」
「いいよ、僕、布団派だし」
なぜか「ふふっ」と笑われた。
「電気、消すね?」
暗闇の中、右上の方から聞き慣れた希の息づかいが聞こえる。
「雄一、何か話して?」
「何か~?じゃあここは1つ、怪談話でも…」
「やだやだ!こんな時にやめてよー!」
希の困った顔が容易に想像できる。
「そういえばさ、前の彼氏はもう本当にいいの?」
「なぁに?急に。……いいよ、あんな奴。大した奴じゃなかったし。」
「浮気もするし?」
「まぁそれもあるけど…色んなことに気づいたタイミングだったから逆に良かったかも」
話し途中な上に、希の隣だというのに、僕はなんだか眠たくて仕方なかった。
連日の寝不足がたたっているのかもしれない。
「ねえ雄一?」
「ん~?」
「もう眠たい?」
「ちょっと。」
「寝ていいよ、何かあったら起こすね?」
「うん。ありがとう、おやすみ」
ゆっくりとごく自然に意識が落ちた。
そして、次に目を覚まし僕の耳に聞こえてきたのは、ゆっくりとこちらに近づいてくるような、床の軋む音だった。
僕は身動きをせずに目だけ開けてみたが、明かりがついていないため、周囲を確認できない。
希から話を聞いた時、幽霊のはずがないと僕は確信していた。
それなのにこの音はいったい何なんだ?
少しずつ近くなって、とうとう何かがすぐ隣まで来たのがわかった。
「気付かれてないと、思ってた?」
.
誘うような女の声。
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