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ー微笑みの行方ー
ー現在ー
春風がどこからか、子供の声を運んできた気がして顔を上げると、ヒラヒラと舞い落ちる桜の花びらが、澄んだ青空を背景に美しい
一面に桜の木に囲まれてた境内は、早朝ということもあって、静まり返っている。
ふと、地面に積もる花びらをみる。雪よりも軽いピンクの薄片(はくへん)は再び、風にのって、舞い上がろうとするけれど、黒や灰色の石に阻まれて、それはかなわず、石のふまとに溜まっていく。
お気に入りの鞄をとり、歩きだす。目的の場所は、さほど遠くないはずだ。
砂をかむ足音がやけに大きく響くので、無意識に手に力が入り、鞄がギシッと鳴った。心音が加速していく。呼吸が苦しくなり、片手を胸に当てて、ゆっくりと長く息を吐き出した。
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