ー微笑みの行方ー

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片手を上げて太陽をさえぎる。足元を見て歩いていると、黒いパンプスが目に入ったので、その人を先に通すように、細い道の隅に立ち止まった。 「あ、すみません」 そう言って、上品な仕草で会釈する横顔に、頭を下げて応える。 携帯で時間を確認すると、約束の時間を10分過ぎていた。もうこんなに......。思った以上に時間が過ぎていることに驚いた。 ここでは時の流れが他とは違うのかもしれない。それでも足を早める気にはなれず、長い髪を後ろに払い、深く空気を吸い込んで、春を全身で感じた。
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