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階段を上がると、猫は付いてこなく、飽きたかの様に踵を返し、茂みへと姿を隠した。
樋口は自分の部屋の鍵を開け、ドアを開ける。すると、辺りは夜になっていた。
先ほどまで白んでいた空が夜に落ちている。満月が輝いていた。
「なんだこりゃ」
樋口は靴を脱ぎ捨て、窓辺に寄る。一反もめんのような布を持ち上げながら走る人の姿が月明かりに照らされていた。
壁に掛けられていた時計に目をやる。十二時を少し回った頃だった。
樋口は急いで一階へと下り、大塚さんの部屋のドアを叩いた。しかし、反応がない。インターホンを押してはみたが、コール音が悲しく鳴り響くだけで、大塚さんは出てこなかった。
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