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「八雲さんに幾つか訊いてもいいですか?」
樋口は狐面の額にある赤い線を見ながら言った。八雲は「いいですよ」と答た。
「何故狐面を付けているのですか?」
「顔を見られたくないのです、私は人見知りなもんで、直接顔を合わせると会話出来ないんですよ。他に訊きたい事は?」
「この大量の狐面はなんなんですか?ちょっと怖いんですが」と樋口は辺りをキョロキョロと眺める。四方八方、狐面が目についた。
「あぁ、これは御守りですよ」
「御守り?狐面がですか?」
「えぇ」八雲はコクリと頷き、一つの狐面を取り出した。八雲が被っている狐面とは違う表情をしている。目を吊り上げ、莞爾と笑っていた。
「狐の遊びから身を守る為です」
「狐の遊び?」
「はい、よく狐に化かされる。というでしょう?それですよ、この京都の街では宵山までの一週間、一匹の狐が人々に悪戯して困らせるんだそうです。狐面を被っていると、狐に仲間だと思われ、悪戯されず、逆に幸福を与えてくれるとか、だから私はこうしてずっと狐を待っているんです」
八雲は狐面の紐を指に掛け、くるくると回した。
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