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八雲は袖から一枚の短冊を取り出した。表にはなにやら小さく文字が書いていて、裏にはキツネの絵が書いてあった。
「いまさっき占いました」
「え?いつの間に?」
「貴男が名前と誕生日を教えた時にですよ」と八雲は短冊を樋口の方に滑らした。樋口は短冊を手に取り、書いてあった文字を見る。
短冊にはこう書かれていた。「宵山の満月が昇る日、狐、汝を弄ぶであろう」
「なんですかこれ?意味がちょっと解らないんですが?」と樋口が首を傾げた。
「狐が貴男と遊びたい、という事です。それが貴男の五分後の未来です」
「五分後とは、また急ですな」
「えぇ、ですからお気をつけて、此方を差し上げます。頭に付けてください」
八雲は樋口に手に持っていた狐面を渡した。樋口は狐面と睨めっこしてから、斜めに被る。
「今宵はありがとうございました。あっ、それと、店を出てから貴男の家に帰宅するまで、決して後ろを振り向かないで下さい」
「後ろを振り向くな?何故?」
「貴男の為です」と八雲はケラケラと笑った。狐面は相変わらず笑っていなかった
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