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ピコ…。
ピコ…。
「よぉ☆ユタ!
また懺悔の時間なのか~?」
靖が持ち前の柔らかく爽やかな笑顔を祐太郎に向ける。
「ゃ…やす…し…。
こ…こんな…入院してて…、んむ…無職だし…」
「大丈夫だよ。
ユタの入ってた保険に入院補償も付いてたし。
退職金もちょっとは出たし。
鎌倉の会社の役員報酬も有るし。
それに、明美と正式に結婚したら、俺もれっきとしたユタの従兄弟になるしな!
俺と明美で、かるーく面倒みてやるぜ♪」
これが、ピコピコハンマーがピコ…ピコ…と聞こえてきた時。
逆に…。
∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ∑ピコ!!!!!!
激しいピコピコが聞こえてきた時。
「∑∑ユタッ!」
祐太郎に雑誌を買いに行ってやっていた明美が、その音を聞いて病室に駆け込んで祐太郎に抱き付く。
祐太郎が壊れたカラクリ人形のように自分の頭をピコピコハンマーで叩き続けている。
「ノンビリしろって、なんなんだよっ!
そんなの治療じゃないじゃないかっ!!!」
明美が少し目を外した隙に、祐太郎の癇癪が爆発してしまっていた。
「凱くんは、もうお医者様なのよ?
凱くんを信じていれば大丈夫よ」
思い通りにならない自分に腹を立てて、目に見える回復も無く、治療らしい治療は食後や就寝前の服用薬だけ。
あとは心に余裕を持ってノンビリ過ごせと凱に言われている。
暇を持て余さないように、パズルや雑誌や小説などを凱も靖も明美も持ってきてやっている。
それでも祐太郎の癇癪は最低でも週に四回は出ていた。
むしろ、出ない日が週に二日前後と言った方が良いかもしれない。
一日に何度も癇癪を起こすことも有った。
父譲りの激しい負けん気。
母譲りの強い責任感。
諦めない瑞啓が、祐太郎に伝えた闘う悟り。
ピコピコハンマーが有ったお陰で、何度も救われた。
祐太郎が我慢できずに壁に自分の額を叩き付ける前に、何度も気付けた。
ピコピコハンマーのおかげで、祐太郎のオデコに傷が出来るのは週に一度程度に抑えられていた。
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