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その頃には、軽度の病棟の個室に移っていた祐太郎。
院内のリハビリルームの常連になっていた。
「こらー!ユター!」
凱がリハビリルームにやってくるのも珍しくなくなっていた。
ランニングマシーンで8キロ走った祐太郎が、息を切らしてハッとする。
「ぁ…あれ…?もう…?」
「時計ぐらい、たまにゃ見ろよぉ~…」
「ごご…ごめん…」
「いや、こんな優秀な患者で驚いてるだけー。
おまえさー?
精神科医としちゃ、いっちばん言っちゃいけねーこと言って良いか?」
「んな…なに…?」
「頼むから、がんばれ」
「んがっ!凱っ!!!
やっと…!!!やっと一気に直してくれるんだな!!!
何でもするっ!んななな…な…何でも言ってくれっ!!!」
「お前の場合、がんばって休め…」
ため息混じりに言う凱に、祐太郎は途端に憮然となった。
「──やぶ医者…」
「ないを~?!
こう見えても、院内ではイケメン・ドクター一位の称号をもらってるんだぞぉ~?!
恋の病の病原菌にもなれる、ある意味やぶ医者以上のダメ医者だ。
文句あっか?」
………………。
まぁ、それは置いておいて…。
祐太郎は、自分の病気を医師任せにしない頑固な患者になっていた。
祐太郎の当初の症状は、不眠・過食・幻覚・幻聴・言語障害・パニック障害。
それに対して祐太郎は、自主的に昼間スポーツを徹底的にする事にした。
疲れていたら、人体は最後には絶対に寝る。
どうしようもないくらいに疲れたら、人間は最後には寝てしまう。
そうやって、主治医の凱が処方しようとする睡眠薬を周囲が呆れるくらいに一切拒絶した。
「かかか…患者の…ぉっ…俺が…拒否する…」
困り果てた凱が、明美や結婚して正式に祐太郎の親族になった靖に「あの頑固者をどうにかしてくれ~」とSOSを出したが結局は祐太郎は睡眠薬には最後まで抵抗し続けた。
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