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その祐太郎は、少なくとも眠れるようにはなってきていた。
元々、インドア派でデスクワークなエリート商社マンだった。
それが、アスリート並み…とまではいかないが、とにかく昼間は運動しまくっていた。
立ち止まってると悔しい。
休むことが苦しい。
それじゃダメだ。
もっと気を楽にしろ…と、主治医の凱は言うけれど…。
ただボーッとしようともした。
何もしないでいようともした。
でも、無為な時間を過ごしていると、逆にどんどん自分に「何をしてるんだ」と自己嫌悪を感じて、不眠や過食の症状が強く現れてしまうのが自分で判った。
本来、精神病になるとは思えないくらいの強靭な精神力。
専門医の凱が、未だに「ありゃ…例外…だな…」と、失笑混じりに言うほどの自らの疾病に挑みかかる精神病患者だった。
睡眠薬だけは、絶対に服用しない。
寝たいなら、徹底的に運動する事にした。
ベッドで横になっていると、つい自虐的なことや悲観的なことを考えてしまって寝付かれない。
けれど、体が疲れきっていたら最後には寝てしまう。
ここで特筆しておくが、これは杉浦祐太郎という個人の特性だということを忘れないでいただきたい。
本来は、専門医の指示を遵守して治療に当たるべきである。
なので、あくまでこの祐太郎の闘病期に関しては、困った患者が一人いた…程度に考えていただきたい。
精神病は、陥るのに時間がかかるのと同じように、快癒するにも時間がかかります。
それは、まったく何も誰にも悪いことをしているわけではありません。
実際、著者はこの時期のことを色々な方面からうかがうに当たって、この時期の彼の闘志に途方も無く驚嘆している。
休め…という主治医の指示のまま休んでいたら、自分を更に責めてしまって悪化してしまう。
そんな強硬な精神を持ちながら精神病に陥ってしまうということ自体が非常事態なのであって、その祐太郎の闘病生活は構えて参考や見本にはしないでいただきたい。
世には、多くの精神病と向き合う方々がいらっしゃいます。
その中には、この物語を楽しみに読んでいただいている方もいると思います。
これを書くに当たり、どのように書くかとても思い悩みました。
あまりにも、祐太郎は自分に厳しすぎる。
どうか、人はもっと自分にも他人にも優しくて良いんだということを忘れずに、以降もお楽しみいただきたいと切に願います。
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