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昼間のスポーツで睡眠障害を克服しようとしていた祐太郎。
睡眠障害が軽くなっていくに従って、幻覚や幻聴も無くなった。
脳の休息ができなくてホルモン分泌の異常も出ていたが、眠れるようになって言語障害やパニック障害も軽くなっていった。
なのでその頃には、自傷行為の発作も起きなくなっていた。
そんな頃に、祐太郎が再び一気に復活するきっかけになる出会いが立て続いた。
明美が、赤ん坊を抱っこしながらその日も看病にやって来た。
「な…なんか…また筋肉が付いたみたいね…」
「まぁ…ね…。
取り立てて…しなきゃいけない事も無いから…、好きにさせてもらってるよ…」
「まったく…。
凱くんも、よく今まで投げ出さないでくれたもんよ…。
ユタみたいな患者、見たことないって何度も言われたわよ…?」
「………………。
こんにちは…。陽太郎…。
お前のお母さんは、お前を産んでから一層口うるさくなったみたいだぞ…?」
明美の腕の中でクリクリと可愛い瞳をキラキラ輝かせているのは、前年に靖と明美の間に生まれた第一子の陽太郎だ。
杉浦本家の墓を継いでいる祐太郎と、その守護霊をしている双子の兄の陽一郎の二人の名を由来に名付けられた。
祐太郎にとって、まるで甥っ子のような赤ちゃんである。
「ホントに可愛いげのない叔父ちゃんで、陽太郎くんも困っちゃいますね~」
そう言いながらも、まるで本当の弟のような従兄弟の祐太郎に、ニコニコしながら陽太郎を差し出す明美。
最初はおっかなびっくりだったが、その頃には慣れた手付きで陽太郎を抱けるようになっていた祐太郎。
「ははは…。
いつも…、やっぱり…可愛いね…。
全体的には明美姉さんに似てるけど…、目元は涼やかな靖にそっくりだ」
「どーせ私は勝ち気なツリ目ですよー。
ぁ…。そだ。ユタ?
西側の雨戸が一つ壊れちゃったから直しておいたわよ?」
「そっか…。ありがとう…。
すっかり家のこと…お願いしちゃって…」
「何を言ってるのよ。
靖も私も陽太郎も、タダであの家に住まわせてもらってるようなもんだもの。
このくらい当然よ」
無人になると家が傷むからと、祐太郎の家には靖一家が住むようになっていた。
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