家族の条件②

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また、謹慎が解けていた祐太郎に一門の者たちも会いにくる事も有った。 その日は、滝本と栄啓が一人の女性を引き連れてやって来た。 「──あなたは…恵さん…?」 「お久しぶりです」 明るい風情で返してきたのは、ペンフレンドでライバルである潤信の妹の紅林恵だった。 そこには凱も居て、カラッと笑って言う。 「今度な?この病院に勤務してもらう事になったんだよ」 「──えっ…!」 驚く祐太郎に、滝本が相変わらずクターッとしながら会話に入ってくる。 「潤信と泰啓がなぁ~? 薬学の大学出て看護学校に入った恵ちゃんに裏工作したみてーだゎ」 そんな滝本の言葉に、恵がクスリと笑いながら応える。 「そんな…裏工作なんて…。 私はただ、兄に『俺の代わりに…助けにいってやってくれ…』って頼まれて、 更に泰啓さんに可愛く『ダメですか…?』ってウルウルの上目遣いでお願いされて…断れなかっただけです…」 「あぁ…。あの…上目遣い…ですか…」 祐太郎が思い出して苦笑した。 「確かに…アレは…効くんですよね…」 そう言う祐太郎と共に苦笑し合った恵が、横でニコニコしている栄啓を示しながら続ける。 「今日は、これから住むことになるこの病院のスタッフ用の寮を下見に来たんですが、必要なものとか調べたり付近の道案内などを栄啓さんにお願いしたんです。 栄啓さんには兄が深く心酔してますから、くれぐれも失礼の無いようにってガミガミ言われて来ました」 「はは…。 ジュノさんは相変わらずですね…」 「近くの提携薬局と、こちらのナースステーションを掛け持ちします。 篠宮先生のお力で、ナースの時はユタさんの担当にもなれました。 薬剤師としてもナースとしても思いっきり新米です。 ご迷惑を掛けてしまう事も有るかも知れませんが、一つ一つ勉強しながら精一杯励みたいと思います。 どうぞ、よろしくお願いします」 「こちらこそ…。 この病院には…、もう…三年も居ます…。 ナースステーションの…人間関係なども…少しは知ってますから…。 とりあえず…、主任さんよりも…副主任さんの方が…怖いですよ…?」 「まぁ! ふふふふ…。 いきなり、とても心強い味方ができてしまいましたね!」 初めての土地での新生活に不安でないわけがないのに、それでも明るく笑いながら逞しく返した恵に一同が一斉に笑い声をあげた。
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