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優美で上品ながら、燃えるような闘志の持ち主の若獅子のような祐太郎は蘭の花の王子様。
片や、そのライバルの潤信は、祐太郎に負けず劣らず凛と気高い品格を備える冷厳な龍王のような雪割草の若僧正。
その潤信の妹である恵は、明るくたおやかで、しなやかな強さを宿す端麗な鹿のようなタンポポのお姫様のようだと思った。
荒野にも構わず咲き誇り、実は何メートルも深い根を張り、薬効も有る気高いしぶとさと命を持つライオンのタテガミのような花。
英語ではダンディー・ライオンと呼ばれる、野原の黄金。
ハチミツやレモンの他にも各種ハーブや数種の漢方茶をブレンドした、独自の自然食スペシャルドリンクを祐太郎に持ってくるようになった恵。
リハビリルームで相変わらずランニングをしていた祐太郎が、恵を見返してからマシーンを止めた。
上がった息を整えながら、恵に微笑みかけてドリンクを受け取る。
「いつも…ありがとう…」
受け取って、クピッ…と一口飲んだ時に凱が怒鳴り込んできた。
「こらぁぁぁ~!!!
またユタにそんなモン渡しやがって~!!!」
凱は、恵がスペシャルドリンクを祐太郎に渡すことを禁じていた。
「そんなもん渡したら、ユタはどんどんリハビリしちまうじゃねーかっ!
ユタにゃ、もっとマッタリしてもらわなきゃなんねーんだっつーのっ!!!」
プンプン怒るドクター凱を相手に、新人ナースであるタンポポの王女様は平然と返す。
「篠宮先生もどうですか?
元気出ますよ?
離婚調停にお忙しいんでしょ?」
「…………………」
実は、この三年の間に凱は再婚をしたが今度は離婚する事になった。
幼い一人娘を抱えて、最愛の妻を亡くして絶望していた。
その絶望期を救ったのは、祐太郎への友情だった。
祐太郎を救いたい。
その一心で一気に復活を果たした凱の周りには女性が群がった。
当初はそんなつもりにはなれなかった凱だったが、結局は一人の女性が勝ち残って後妻に入ったが…。
前妻の面影を忘れられない凱と、連れ子の育児が予想以上に大変だった。
医師夫人。
響きより優雅な生活ではない。
夜も昼も、休日も何も関係無い医師の妻の務め。
更に、その凱がずっと前妻を忘れられない状況で、夫の連れ子の育児…。
凱はまだ二十代にも関わらず、既にバツ2になる事が決まった…。
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