『Ⅰ.営業員 雷』

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祖母は介護施設に2年前から入所していた。 祖父はすでに亡くなっていて、ぼくの両親がちょくちょく会いに行っては料理を作ったり、手伝ったりしてたのだが、 2年前ぐらいから家族での介護の限界と両親との同居を勧めても「迷惑かけたくないから」と、 本人が同居を拒否することから仕方なく、施設の入所を決めたのだ。 元々祖母は畑仕事を日課にしていた。 明るく、よく笑う人だったが、家の段差につまづき、脚の骨を折ってからは畑仕事が億劫になり、家に籠もりっきりになってしまった。 陽が昇ってから沈むまで、 ずっと居間で座っているか寝ているような生活をするようになった。 その時の祖母に会いに行ったことがあったが、印象が少し変わった気がしたのを覚えている。 なんだか、 萎えてるような雰囲気で、部屋が暗かったせいもあるのか、動作が暗く、言葉少なかった。 その頃からだと思う。 あの病気が萌芽したんだ。
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