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「え、エーアイ・・?」
「しらねぇって顔してやがんぜ」
大男がデカい口を開く。
「AIって・・・それじゃあなんで・・・」
よくよく思い出せば、両親は自分達を空賊ではなく、"空族"だ表現したことがあった。
空に出ろと言ったのも、別に空賊になれと言ったわけではなく、もしかしたらAIになれという意味だったのかもしれない。
「じゃあ・・・あたしの勘違い・・・?」
ドクンドクンという鼓動と共に、何かが崩れ去った。両親と同じ空の人間になろうとしたはずが、両親が追って取り締まっていた、空賊になってしまった。
「まぁいいじゃねぇか、今からでもAIにでもなりゃ」
ガハガハと、大男が笑い飛ばす。
「ジューク、運転代われ」
運転席の男は、金髪の男にそういうと、ペンダントを手中でぶらつかせたまま、助手席に乗り移った。
「・・・」
男は無言で後ろを向くと、黒髪を掻き上げた。
「ふーん、あいつらの子供か。あいつらには、散々追い回されたっけか・・・懐かしいな」
よくよく男を見れば、若造かと思っていたその顔は、大人顔だった。
「・・・知ってるんだ」
あまりこの男とは話したくなかったが、ユウリは仕方なく短く尋ねる。
「よーく知ってるに決まってんだろ、なぁドル、リリン」
男がユウリの隣にいた怪人と、後ろの女性に話しをふる。
「あの二人は確かに優秀で名も高いAIで、同じく優秀な俺らはしょっちゅう追い回された。
操縦の腕が良い男に、洞察力と観察力に長けた女・・・ありゃかなり手強かった」
そう話されてるうちに、ユウリはだんだんと気持ちが落ち着いてきた。
どのみち、やはりカッコイイ両親に変わりはないのだ。
「空賊からして一番厄介な敵は、政府のAIだ。
・・・しつこくて腕のある奴らは特に。
・・・あいつらはその典型だったが・・・俺はお前の両親、嫌いじゃなかったぜ」
男が初めて、嫌みではなく片口を上げた。
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