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「・・・・な、何・・?」
男達の予想外な反応には、逆にユウリが驚かされた。
「ちょっと見せてくれないか?・・・大事なお守りなのに悪いが」
運転席の男が後ろ座席のユウリに、手を伸ばして言う。
ユウリはなんだかわからないまま、数秒男を見つめてから、静かにペンダントをその手に乗せてやった。
男達は一斉にそれを覗きこみ、機体は軽く揺れた。
ユウリは内心、運転に集中してくれと思った。
「・・・紋章が・・・・」
「嘘だろ」
「まさか。こんな子供が持ってるわけない」
「そりゃそうだ。口のききかたもなってない小娘じゃないか。多分12、3歳とかそこらだぞ」
声をひそめる気遣いもない男達に、ユウリは少しイラッとした。
「返して。大事なんだから」
短く言って手を突き出す。
「君、こりゃ家の鍵かなんかだろ?首にかけてたりしちゃ、危ないじゃないか」
「家の鍵じゃないってば!大切ですごい宝物なんだから!」
「まさか宝物庫の鍵だ、なんて言わないだろ?」
返そうとしないことに苛立ち、ユウリは思わず立ち上がった。
「そんなんじゃなくて、もっとすごいものなんだから!世界も変えることができる鍵!」
「なんだって・・・?!」
「いいから早く返してよ!」
ユウリは空中も忘れて、運転席に乗り移ろうとした。
が、両隣りにいた男達に、慌てて取り押さえられた。
「危ないから、座ってないと。また落ちるよ?」
「世界を変えるとは、どういう意味かね?」
運転席の男が聞くが、ユウリにも分からなかったし、どうでもよかった。
「さぁ?でもそれをくれた人がそう言ってた。意味があるわけじゃなくて、それくらいおっきな願いを込めて、くれたんだと思う」
ジェット機は、アルギア帝国本土の、淵に着陸した。
空に浮かぶ大陸の外側は、約数50メートルは建物を立てず、土や葉が広がっている。
「一体、誰がこれを・・・?」
機体の横のドアが、パカッと開けられた。
「あたしの、両親だけど」
ユウリは隣の男を跨ぐと、ジェット機から降りて、運転席の横へ回った。
「両親は立派に空飛ぶ空族だったんだ。大事な、形見なんだよ。だからっ・・・」
「・・・そうか」
ブォンッ・・・とエンジンがかけられた時には、もう間に合わなかった。
男はペンダントを握ったまま、ジェット機のアクセルを蹴って、あっという間に上昇した。
地にユウリを置いて。
「これは君には必要ない。・・・いいか、喜ぶんだ。これはアルギアのためになる!」
「えっ?!ちょっと!!・・ま・・・・待てー!!」
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