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まさかの出来事に、ユウリは目を白黒させた。
飛行手段なく草原に突っ立って、遠ざかる男達を見つめるのは、なんとも虚しかった。
「どうしよう・・・」
もう会うことが出来ない両親がくれた、大切なものだったのだ。
取り返さないかぎり、二度と手に入らない。
こうなったら、町に入ってどこかからジェットを借りて、追いかけるしかないー・・・
そう思った時、空にもう一機、真っ黒のジェットがどこからともなく現れた。
飛行の音もなく、スピーディーに飛んで行く。
「・・・?!」
ユウリが見ていると、黒のジェットは、先程の男達が乗るジェットに向かって、猛直進して行く。
「!!」
微かにだが、叫び声や掛け声が聞こえた。
何が起こったのかと、ユウリはただ向こうの空を見つめていた。
そのうち、しばらくすると黒のジェットはくるりと旋回し、なんとユウリの方に一直線に向かってくるではないか。
「何なに・・?!」
黒の点が、だんだんと大きくなってくる。
ユウリは逃げようと町へ駆け出そうとしたが、黒のジェットはあまりに速かった。
「捕まれ!」
「えっ?」
そんな声が聞こえたかと思えば、ものすごい突風のごとくジェット機は通りすぎ、ユウリは何者かによって再び空に引き戻された。
「はっは、追ってこれねーぞ!ただのポンコツじゃねーか!」
耳元で、鼓膜が破れるような爆音-・・・男の声がして、心臓が吹っ飛びそうになった。
「わっ、ちょっと!」
ユウリは自分が、まるで怪人のようなゴツい男に、抱えられているのに気づいて叫んだ。
「ジューク、上げてくれぇ!」
ユウリはやっと、自分の状態を理解した。
黒のジェットから降りているワイヤーに、ゴツい男と共にぶら下がっているようだ。
風が耳を叩き、ユウリは男と共に、ジェット機へと引き上げられていくのを感じた。
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