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まだ会って数分、ユウリは既にこの男が苦手だった。
と言うより、この男の視線が苦手だった。
「なめて・・・ない」
辛うじて反論した声は震えた。
「空に出たいなら、観光ででも何でも来ればいい。・・・もしくは政府の空中査察官になるとかな。
空を知らねーガキんちょがよ、わざわざ一人で空賊ごっこなんてな。
空賊バカにすんなよ」
(・・・だって・・・・)
「バカになんかしてない・・・!両親が立派な空賊だったんだ!あたしに、空を飛べって言ってくれた・・・だから・・・。
でも、空賊を教えてくれる人も今はいないから、自分で飛び出す他なかったんだよ」
ユウリはそう答えてるうちに、声は震えるし、顔は俯いてしまった。
(・・・だめだよ、あたしは・・・強く生きるんだから・・)
一息ついてから顔を上げると、運転手の男は前に向き直っていたが、考えてるようにハンドルに置かれた指が、トントンと動いている。
「・・・両親は空賊だったのね?」
後ろから、女性の声がかかる。
黒だが紫だかの髪が、ミステリアスな雰囲気だったが、話し方は穏やかだ。
ユウリはコクンと頷いた。
「ご両親の名前は?俺達もずいぶんと空を走ってるから、知っているかもしれないよ」
運転手の横の、金髪の男が言った。
「・・・グレード・マクハンと、サラ・マクハン」
「おいおい」
運転席の男が、またまた声を張り上げて来た。
後ろを向いて質問していた金髪の男も、眉を持ち上げた。
「本当か?あのマクハン・・・?」
驚いたような金髪の男の声に、ユウリは少し満足げに顔を上げた。
(やっぱり、お父さんとお母さんは、有名な空賊だったんだ!)
しかしその想像は、運転席の黒髪の一言によって、掻き消された。
「マクハンてよ・・・お前、何の間違いかしらないけどな・・・そりゃ、空賊じゃねぇよ。
その二人は、空賊を取り締まる、政府の空中査察官"AI"だった奴らだ」
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