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飛びたいと思った。飛べると信じた。
生まれたときから持ち続け、同時にどこかで抑えこんでいた意志が、今、確かな形を伴って、女の中に脈動している。
鎖が一つ弾けた。その澄んだ音が、衝動を加速する。背中を押される。自然に笑みが零れた。 もう、飛べないかもしれないという思考は一切なかった。
――私は、飛べる!
連続して、鎖を引きちぎる。洗練された機械のツバサが、その縛りから解放される。
女は腰を上げ、男の軌跡を見た。それが道しるべだった。
最後に、女の首から鎖が解かれた。立ち上がる。はばたく。
飛べないわけがない。
跳んだ。味わったことのない、浮遊感を全身で感じた。
――確かに、飛んでいた。
強い意志が、ツバサのはばたきと化して、女の体を、空に持ち上げている。
すべてからの解放感があった。
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