裏門の少女

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「桜の精だぁ・・・?」 「そうなの!」 リクは制服のポケットに両手を突っ込み、白けた目で目の前の少女を見下ろした。 「・・・どいてくんねーかな。新学期早々、既に遅刻なんだわ」 桜満開の、咲等(サクラ)校。 新学期を迎えた、青烏(アオウ) リクは裏門で足止めを喰らった。 「お願い!ほんの一ヶ月で・・・ううん、二週間でいいの!あたしとお友達になって・・!」 栗色のふわふわの髪、花柄のワンピース。 普通にしていれば、一般的には可愛らしい少女。 しかしリクの目の前に飛び出すと、自らを"桜の精"だと名乗った。 (こんな普通の顔して、頭のおかしい奴もいるもんだ。 ・・・世も末か。) そんなことを思いつつ、リクは少女を通りすぎる。 「はいはい、じゃあな~」 リクは少女を見ないようにしながら校舎に向かいつつ、顔の横でピラピラ手を振った。 ワックスで立て上げた茶髪、ネクタイなど家で眠っている。 鞄は無くした。だから今日も、財布と携帯だけをポケットに突っ込んで、手ぶらだ。 それなりに整った顔立ちの不良学生、青烏 リクはこの手の人間に免疫はなかった。 「・・ま、待って!・・・お願い!!」 少女の叫びを無視し、リクは人のいない裏門を行く。 幸い、後ろでしつこく叫んではいるが、追いかけてくる様子はなかった。 「・・・変なモン見たわ・・・」 リクはボソッと言いながら、のろのろ階段を上がった。 「おいっリクー!!」 階段の下から、嫌な声が聞こえる。 小うるさい学年主任だ。 「遅刻カード書けー!」 「うっせーなー・・・声でけーんだよ・・」 リクはそれも無視し、2階の教室2年6組、後ろのドアを開けた。 「うーっす」 一応挨拶して教室に入る。 ドアを引き開けた途端、ざわつきが外にもれだした。 見たところ、新しい教科書を配布している最中だった。 クラスの面々は新しい顔、新しい担任。 「遅い!」 教卓から、女教師が一喝。 「ねぼーしたんだよー」 新顔とは言えど、この女教師もクラスの大半も、知っている。 ・・・まぁ、全然知らない生徒も何人かいるようだが。 「んだよリク~新学期早々かよ!」 「バカじゃね!!」 「つーかお前また手ぶらかよ!」 リクは一番後ろの空いた席にドカッと座ると、教室中からワイワイ声がかかった。 リクは欠伸をすると、机に突っ伏した。
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