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やめてくれ、とリクは目を閉じた。
これ以上、分けのわからないことを言わないで欲しい。
こんな変わった子じゃ、確かに友達はできねーわ、とリクは正直思った。
「あたし、あと少ししかここにいられないの。・・・だから、その前にどうしても、お友達が欲しかったんだ・・・」
「・・・ ・・・」
(そんな寂しげな顔、されてもね・・・)
「あっれ!?リクいねぇ!あんにゃろ、待ってろっつったのにー!!」
向こうで、ハルのでかい声が聞こえた。
裏門にまで聞こえるとは、相当だ。
「じゃ、呼ばれてっから行くわ」
「あっ。あ、待って待って!」
「・・・だから、いい加減にしてくれ。何なん・・・・」
歩き出したリクは、必死な呼びかけに、少し苛々と振り返った。
振り向いたリクは言葉を切った。
両手にいっぱいの桜の花を、少女はリクに差し出していた。
(え・・・?・・いつの間に拾ったんだ・・・?)
「・・・え?何、オレにくれんの?」
リクがぽかんとして尋ねると、少女は丸い目を輝かせながら、嬉しそうに頷いた。
「いや、そんなもらえねーから」
リクがそう答えると、少女は少し首を傾げ、山の中から一つ桜の花をつまみ出した。
他の花は、風に吹かれて舞っていく。
「・・・あげる。ね?」
少女の笑顔は、何て言うか・・・汚れのない笑みは、まるで子供のような雰囲気だった。
幼い子供が笑顔で寄ってくれば、人は邪険に扱えぬものだ。
・・・まさに、そんな感じ。
「・・・・あり、がとう」
リクは戸惑いつつ、仕方なく桜を受けとった。
少女はまた、心底嬉しそうに笑った。
「じゃあ、また明日ね」
少女は満足したのか、リクに軽く手を振る。
「・・・いや、明日祝日だから。学校ねーし」
リクが困って答えると、少女は再び首を傾げた。
「学校、ないの?・・・そっか。でも、あたしここにいるからね」
(・・・また、分けのわかんねーことを・・・)
「よかったら、遊びに来てね。・・・待ってる」
(・・・いや、待ってられても・・・)
「リーークー!!出てこーい!!帰ってたらぶっ飛ばーす!!」
無言の会話を少女と交わしていたリクは、ハルの大声で我に帰った。
「・・・じゃ、まじ行くわ」
「うん、ばいばい」
爽やかな風が、ピンクの花びらを運ぶ。
リクは数秒少女を見つめてから、背を向けた。
新学期
春の裏門
桜舞い
心風にか
揺れてさまよう。
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