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ずっとこの地に留まらせるため。
村を守ってもらうため。
彼女の体の鎖が揺れる。
結局、攻めてくる輩など居なかった。何ヵ月経っても、ここ以外の村が襲われたという話すら聞かない。たかが噂だったのだ。
それでも彼女の鎖は解かれない。
それどころか数が増えた。
一度解放された人間の欲は、再び収まることを知らない。どうして今までこうしなかったのだろう……と、人々は笑い声を上げた。
一年に一度彼女が舞い降りただけで、村の豊作が約束される。
ならば、此処に永遠に在り続けてくれたなら。在り続けさせたなら。
いっそ自分達の村が、国を統一できるほどの繁栄に満ちるのではないか。
人々は笑う。
どうして今までこうしなかったのか、と。
人々は笑う。
彼女は神なのだ、と。
人々は笑う。
我々は神すら、跪かせているのだ、と。
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