3/9
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
ずっとこの地に留まらせるため。 村を守ってもらうため。 彼女の体の鎖が揺れる。 結局、攻めてくる輩など居なかった。何ヵ月経っても、ここ以外の村が襲われたという話すら聞かない。たかが噂だったのだ。 それでも彼女の鎖は解かれない。 それどころか数が増えた。 一度解放された人間の欲は、再び収まることを知らない。どうして今までこうしなかったのだろう……と、人々は笑い声を上げた。 一年に一度彼女が舞い降りただけで、村の豊作が約束される。 ならば、此処に永遠に在り続けてくれたなら。在り続けさせたなら。 いっそ自分達の村が、国を統一できるほどの繁栄に満ちるのではないか。 人々は笑う。 どうして今までこうしなかったのか、と。 人々は笑う。 彼女は神なのだ、と。 人々は笑う。 我々は神すら、跪かせているのだ、と。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!