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そしてその村に、一人の少年が産まれた。彼女を拘束してから一年が経った頃だった。
少年は、鎖に繋がれた彼女の存在を知らぬままに成長する。五年、十年と月日が経ち、少年は十二の誕生日を迎えていた。
彼女を手に入れてから、村に定められた新しい決まり事。
それは、子が十二になったら彼女の存在を教えること。
少年は彼女を知った。
神を知った。
鎖に繋がれ、瞳を閉じる彼女。それはあまりにも美しく、彼女の周りだけ光の梯子が降りているように見えた。
それから少年は、毎日欠かさず彼女の元を訪れる。特に意識しなくても、気が付くといつも彼女の元へ向かっていた。
やがて少年は不思議に思う。
いつ訪れても、彼女の瞳が開かぬことに。
何か尋ねても返事は無い。
笑顔を求めても表情は変わらない。
眠ったように瞑られた彼女の瞳は、まるで開くことを拒否しているかのように。
少年は神の元へ通った。
そうして半月が経った頃。
彼女の唇が動きを見せた。
必死に言葉を聞き取ろうと耳を澄ます少年。彼女の声が紡がれる。
『飛びたい……』
彼女は一言、そう言った。
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