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そして、彼女が捕らわれてから十五年。
その十五年の間で初めて、彼女の瞳が開いた。透き通るような瞳。それは儚く壊れそうで、けれど強く威厳を放つ。
その異変に気付いた一人の男により、やがて村人全員が神の元へと集まった。懐かしい彼女の瞳。そこに、集まった村人の顔がゆっくり写っていく。
村人は少しも動けない。そんな村人を、ただじっと見つめていく。
時間を掛けて、ゆっくりと。
どのくらい時間が経ったのか。
ふいに彼女の唇が動いた。
あの日の少年のように耳を澄ます村人たち。彼女の声が、脳に響いてくる。
『……哀しいですね。汚れたものは、戻らない』
そう言って、彼女は再び目を閉じた。まるで視界に入るもの全てを拒絶するように。
そしてその日から、村は地獄へと変わった。
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