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ゆらりゆらゆら。
光は踊り、蝶が舞う。
古びて朽ち果てた城に彼女は住んでいた。幻の世界を行き来するようになった城の当主は、自らの名前を忘れた姫だ。
他者の記憶を奪わねば、はらはらと自らの記憶を少しずつ失う少女。
森に彷徨う者があれば、彼女が帰り道を指し示してくれるが記憶を奪われてしまう。
「迷ったならば、わたくしの城へいらっしゃい」
現(うつつ)では廃城となった場所。
そこで彼女がふわりと舞い踊る。古びた城に朽ちた庭園が煌めいて、蝶が舞い、光が踊るたびに揺らめく。そうして美しい幻を見せる。
優美な城に招かれて旅人や迷子は夢を見る。儚く短い夢を見て、一部の記憶を姫へと捧げて森を出るのだ。
ゆらりゆらゆら。
光は踊り、蝶が舞う。
廃城が魅せるは、記憶を持たざる姫の世界――。
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