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運命なんてないと思っていた。動くはずのないと思っていた歯車を回したのはあなただった。
ただ保存され、観賞されるだけの人形の私を動かしたのは、一人の少年だった。
かちり、かちりと音が鳴る。
少年が青年へと成長しても私は何も変わらない。
見下ろしていた可愛らしい少年は、いつの間にか私と同じ背になった。そうして見上げるほどの青年へと成長したのだ。
「……帰蝶(きちょう)」
「はい」
与えられた名前が嬉しいのに、目の前にいる彼を見ることが悲しかった。
「君の、君の次の主を見つけたよ」
治らない病。
治る見込みがない病気。
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