運命の歯車

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 私にはどうすることもできない現実が痛かった。この身に移すことも、代わることもできない。  ふるふると首を横に振る。  人形の身で恋をした。  歯車を回した者は過去にもいたのに、彼にしか感じない想いがある。 「私は君の命を繋いであげれない」  歯車を回して動かす人形。そんな私を大切に扱って、自由にさせてくれる優しい人が何よりも私にとって大切になっていた。 「私は輝明(てるあき)様と共に朽ちたい。ただガラス箱に入れられていた私を動かし、大切にしてくれるあなたに命を捧げると決めていました」 「君は馬鹿だなあ……何もこんな厄介な病気を持った私に捧げるなんて」  柔らかく悲しげに、どこか嬉しそう彼が笑う。
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