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店内はワンフロアに置かれたいくもの
テーブルで賑わいを見せていた。
料理を食べながらあんな風に笑えたら。
それすらも羨ましと思う佳奈は康介共に2人のボーイに連れられて奥の部屋へ
案内された個室に入るなり声をあげた。
「百合の設え、すごい綺麗!!」
二人掛けのテーブルにしては広く、
その中心に活けられた百合の花。
壁紙も天井ランプも百合がモチーフ。
「もし、よろしければ帰りにお包み
いたしますがいかがですか?」
コートを渡して椅子を引いて貰って
座っり、ボーイの言葉により目が輝く。
「いいの!?」
「はい。御持ちください」
「料金いくら?」
「無論、無料でございます」
「ありがとう」
佳奈達が座るとボーイ2人は一礼。
「本日こちらのテーブルを担当させて
頂きます、私、椎名要と申します。」
「同じく、猫野黎です。
ご予約のお料理を御持ちしますので、
どうぞごゆっくりおつろぎ?おつく?
あれ?」
黎が隣を見ると、要は笑顔で耳打ち。
「ごゆっくり、
お・く・つ・ろぎください」
「クスッ、うん。ありがとう」
「ではごゆっくりお楽しみください」
一礼して去って行く2人を見送り、
康介を見るとにっこり笑っていた。
「楽しそうで良かった」
「え?」
「前、覚えてるかな?
俺の誕生日の時はさ、かなりつまらな
さそうにため息ばっかりついてさ。
でも、入り口にあった花瓶には笑ったり
してかなり悩んだよ。
どの花が好きなのか分からなかったし」
「では何故百合だと?」
「何かの文集に凛と咲き誇る
百合のようにありたい。って書いてた」
「あっ……、高校の卒業文集」
懐かしいと言うより恥ずかしさに
頬を赤らめた。
「佳奈と同級生の兄貴が居てさ、
勝手に部屋物色して読んだ」
「勝手にって……」
「でも、そのおかげで、今日までだった百合の設えを佳奈に見せられた」
「今日まで……」
「来て良かっただろ?」
「うん、ありがとう」
それからは吹っ切ったように楽しむ事
だけを考えながら、食事を楽しみ、
百合を貰って外に出た。
腕時計で確認すると来た時より
1時間以上経っている。
「今日は有り難うございました」
「この後の予定は?」
「一度社に戻って机に貯まった書類の
整頓とお父さんに本日の報告が……」
「はぁ!?また仕事?」
「えぇ、後回しにして来ましたので」
「そう……だったんだ……」
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