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一瞬驚いたような顔をしたが、
すぐにいつもとは違う柔らかな笑顔を
見せた康介。
「やべぇ……すっげぇ嬉しい」
頭をポンポンと撫で、その手は下へ。
佳奈の顎を捕らえ親指が唇をなぞる……
「こん――」
プップー
「康介!!!」
2人が振り返ると高級車が路肩に
寄せて止まり、見覚えある顔が見えた。
「兄貴!!」
駆け寄り、車を除き込むようにして
言葉を返している。
「お前のマネージャから俺のところに
電話鳴りっぱなしだ。
お前、電源切ったままだろう?」
「やべっ……」
「乗っていくか?」
「いや、彼女を送ってから」
「彼女?」
「おぃ!!佳奈!!!!!」
花に見とれていたと言うのにいきなり
話をふられワンテンポ遅れて駆け寄る。
「はい!!」
「こちら
「佳奈か!!久しぶり元気だったか?」
懐かしい声。
自分が一番求めていた笑顔。
「勿論。ってか、それが私の唯一の
取り柄だって言ったのたっちゃんだよ?
2年しか経ってないのに忘れた?」
「いや、覚えてる」
泣きそうなるから、花束で顔を隠した
佳奈は平然を装って言葉を繋いだ。
「スーツが嫌いとか言ってたのに
様になってるじゃん馬鹿……」
「ちょっと待て、2人は知り合い?
えっ?10クラスあったから1度も
同じになった事無いって言ったよな?」
話についていけない康介はその表情に
うっすら焦りを見せた。
「あっ、俺が大阪に行った時に偶然
相席してから同じ学校って言うことで
意気投合。1年間4人でよく遊んだな」
「うん、遊んだ、遊びまくった。
はぁ……約束はどうなってんの?」
顔を上げた佳奈の目には雫が溜まり、
それでも笑顔を見せる。
なんとも切ない表情を見せる佳奈を
見たのは初めての事で、言葉に詰まった
康介は拳を作り握りしめた。
「もう少し待って、大丈夫必ず守るよ」
約束?
「分かった、じゃもう少し待ってる」
2人の関係は何?
「じゃ康介もらって行くな」
なんで?
俺の前ではそんな風に笑わないのに……
「うん、またね」
佳奈は兄貴の事が好きなのか?
一番思ってもいなかった場所から
急に現れた彼女の心を独占する彼は
自分が最も信頼するべき人……。
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