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皆が椅子に座っているのを確認した後
手帳を片手に立ち上がった。
「この度は我が社の企画にご協力、
ご参加いただき有り難うございます」
一礼。
「今回、イベントでの空き時間に
気軽に食べられる1個500円以下の
お菓子の提供をお願い致しましたが、
本当にどれも素晴らしい物ばかりで
社長に良い報告ができるとこちらも
嬉しく思います。
一週間後には各連絡先に連絡させて
いただきます。
本日は本当に有り難うございました。
受け付けにお見上をご用意して
おりますので受け取った方から
お気を付けてお帰りください。
本当に有り難うございました」
最後に深々と頭を下げると
拍手が送られ、佳奈から目での
合図を読み取った周防は出入り口の
扉を開け一人一人に頭を下げて
気の利いた言葉をかけた。
来客が帰り、扉が閉められると佳奈から声をかけた。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
引き続きこの部屋でライブの照明を
任せる事になった宮内様と顔合わせになっています。
ご到着まで時間がございますが飲み物は如何なされますか?」
「さっき飲んだお茶をお願いします」
「分かりました、用意します」
鞄から水筒を取り出し部屋に用意されてあるコップに注ぎ手渡す。
先程のプレゼンでの書類を読み直し
ながらため息をつくと佳奈の頭を優しくポンポンと撫でた。
「お疲れですね。
少し時間を調節かれては如何ですか?」
「お父さんに逆らえないから……」
うつ向き微かに呟く。
そんな事正面切っては言えない為
上を向いてにっこり笑った。
「大丈夫だよ。あっ、そうだ。
今日の18時のお父さんとの会食
断ってくれないかな?
私から言うと探られそうで嫌なの」
「それはいいですが、理由は?」
「康介と食事」
あぁ……、またこの人は……。
「分かりました」
「ごめんね」
顔は笑っているようだが目は寂しそうに
必死にこれから訪れる運命を受け止め
ようとしている。
25と言う年で何故この子は会社を
背負い、極度に人を気遣い、寝る時間を裂いてまで仕事に没頭し、生きる道すら決められなければならないのか。
「む――」
無理をするなと言ったところで
何が変わると言うのだ。
無理なのは百も承知ではないのか?
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