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世界は何色か? そう聞かれたら、僕は間違いなく応える。
世界とは、赤だ。
時としてその色は、世界をただ一色に染めてしまう。
その絶妙な瞬間こそ、僕の心を満たしてくれる刻。
そう、今は暮れ時。
太陽が遠くへ沈み込んで行くその刹那に見せる、美しき紅。
世界の全てが染まる。僕の隣を歩いている、ティアナを……染める。
人の精神を可笑しくさせるこの時間。そして僕はこの時間が果てしなく、大好きだ。
そう、大好きだ。あの光が。あの色の太陽が。そして、僕の隣のティアナが。僕は大好きだ。
ボロボロの家が建ち並ぶこの町のこの時間。まるで二人きりみたいだ。僕たち二人だけが、この広い世界に存在しているかのような、そんな錯覚。
静かに、漂う風。
隣を見た。ティアナが居る。
金色の美しく長い髪。真っ直ぐと前を見据える瞳。ティアナの匂い。透き通った肌。そして、その全てはあの夕日に染められている。
好きだ。本当に…………心の、底から。
「ふふ、どうしたのキルト? そんなにジロジロ見て」
ティアナがその瞳を、僕に向けて来た。その瞳をよく見てみると、僕が映っているのが分かる。
妖艶なその瞳に吸い込まれてしまいそうで……僕は快楽の闇に溶けてしまいそうになる。
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