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クスリと笑うティアナ。
あぁ、満たされる。ティアナの声を聞くと、満たされる。その瞳に見られると、満たされる。ティアナという存在が、僕に意識を向けている事が分かると、満たされる。
――満たされていく。
「別に、何でも無いよティアナ」
僕は素っ気なくそう言うと、そっぽを向いた。
「もう、キルトったら」
少し怒ったような、困ったような。そんな表情を浮かべた後に、笑顔。
あああぁぁあぁぁ……。
綺麗だ綺麗だ綺麗だ綺麗綺麗綺麗綺麗綺麗綺麗綺麗綺麗綺麗。
夕日の紅に照らされているティアナは本当に綺麗だ。
でもね、僕は知っている。あの夕日よりも更に色濃い、美しい……紅を。
だからもっと。
もっと。
もっともっともっと染まってくれたなら、ティアナはもっと綺麗になるのに。
自分が抑えられなくなりそうだ。そう、あの紅い色は、おかしくさせる。人の精神を。僕の心を。世界の色を。
そんな、魔性の色だ。
そして僕は、その虜。そして、悲しくなる。寂しく、切なくなる。終わりというものが、近付いている証拠なのだから。
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