神山兵悟(30)

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オープンカフェには、外国人しか見当たらない。 それもその筈、兵悟は日本人で周りは別人種だ。 彼らから見たら兵悟もまた、外国人である。 空港に一番近い大きな街のホテル“グランドコートビート”に滞在して3日。 空港の近くで大収容出来るだけあって、客の出入りが激しい。 繁華街ももれなく、人で賑やかだ。 その中にある店の1つ。 “ローズ”という名のカフェテリアに、日本人が1人。 欧米人よりも幼く見え、1人旅は危険だとされる。 街が大きければ大きいほど犯罪率も高い中、優雅に見える仕草で庇の下のテラス席に座っていた。 エスプレッソ珈琲とバターの香りが食欲をそそるクロワッサンを朝食としている。 ――神山兵悟―― 艶やかな黒髪は短い。 バンビみたいな大きな瞳と筋の通った鼻と薄く色付いた唇。 ゆるりとした首元の白無地の半袖シャツはスキニーストレートパンツの中に入れている。 黒のカットソージャケットの右ポケから折り畳まれた紙を取り出す。 周りの人がちらちらと見ているのも構わず、珈琲カップを口元で傾けた。 男も女も惹き付ける容貌をしているが、当の本人は全く解していない。
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