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わたしのクラスは2組で、隣の1組には田中くんがいた。
田中くんは何かを探しているのか鞄のなかやポケットのなかをいろいろ触っている。
どうしたんだろ……。
いつもならそう思っても気にしないふりして帰っていたと思う。
話したこともあまりなかったし、人見知りだから話し掛けるのは苦手だから。
でも……今日は、ちがった。
部活の時に助けてもらった恩もあるし、放っておくのはなんだかすごく悪いと思った。
わたしは勇気を出して話し掛けてみることにした。
「………田中くん。なんか、探し物?」
慣れないから少し声が上ずってしまった。
田中くんが鞄から視線をあげてわたしと視線がぶつかる。
「…あぁ、和泉か。んー、自転車の鍵が見当たらなくて」
よくあるよねー、わたしもどこにいれたか忘れちゃうことよくあるもん。
そう思っただけで口からは一言の言葉も出てこない。
や、やばい……なんか言わなきゃ……。
焦れば焦るほどなんて言えばいいのかわからなくなる。
わたしが何も言えずにいるのを特に気にした様子もなく田中くんは鞄の中を探る。
一人で焦ってばかみたいだ。
なんとなく敗北感に駆られてその場に立ち尽くしていると
「………あっ!あった、あった」
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