きっかけ

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「………ん。そろそろ帰ろっかな」 わたしは精一杯喉から声を絞り出し、自転車のある位置へと体を方向転換させた。 「……ありがと」 ぼそっと田中くんが何かを言ったが聞き取れなかった。 「えっ?なに?ごめん、聞き取れなくて…」 田中くんは口を尖らせてこっちを見つめてくる。 え……。なんか気にさわるようなこと言ったかな? 「………」 「………」 き、気まずい。わたしなんかしたかなぁ…。 「…だから、ありがとうって。鍵探してたら心配してこえかけてくれたから」 ぶっきらぼうにそういうと自転車にまたがり動き始めた。 「どういたしまして」 田中くんは顔をこちらに向けることはないまま手で、ばいばいをしてその場から去っていった。
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