R.B.

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「アタシはミハル……心に太陽の陽で心陽ね。  アンタは?」 「ミヅキ……満ちる月で満月だ」 「良い名前じゃない」  そう言いながら心陽は俺を拘束する縄を解いた。 そういえば、女みたいな名前だといわれなかったのはこれが初めてじゃないだろうか。 「どうして解くんだ?」 「別に満月の身柄を拘束するのが目的じゃないからよぉ」 「じゃあ、あの男はどうして?」 「ああ、グリちゃん?」  あの男にそんな可愛らしいあだ名があったとは。 もっとも、可愛らしいかどうかは議論の余地があるだろうが。 「あいつはいったい何なんだ?  ヒョロい癖に怪力だし、一言も喋らないし!」 「ううん、優秀なんだけど極度の面倒くさがりなのが玉に瑕なの」  そういう説明を求めていたわけじゃないのだが、どう聞けば目当ての返事が返ってくるのだろうか。 「で、なんで喋らないんだ?」  しばらく考えた挙句、直球に聞いてみることにした。 「面倒だかららしいわよ。  少なくとも、グリちゃんが教えてくれた理由ではね」  喋るのさえ面倒な人間が、この世界で生きていけることには少し驚いたが、それ以上に呆れてしまった。 「ちなみに、グリちゃんってのは私が考えたあだ名で、アスール・グリントって通り名がベースね。  通り名の統一感のなさは、グリちゃんがハーフだからか、ただ単に語呂がいい言葉を合わせただけなのかは謎だけどね」 「グリントのこと、よく知らないのか?」 「そうねぇ……本名不明で経歴不明って事は確かよぉ。  謎の多い人ね」  謎の多いという一言で片付けることのできる心陽の神経の太さがどこから来るのかも、俺には謎だよ。  コホンと咳払いをして、心陽は俺の前に回った。 「ねぇ、提案があるんだけど……聞いてくれるかな?」 「却下だ。  ……だいたい、人の自殺を邪魔しておいて提案もくそもあるかよ」 「まぁまぁ、そう言わずにさぁ。  満月だって世界がこんなだから死のうと思ったんでしょ?」  それはそうだ。 他人の痛みもわからないような連中で溢れかえってしまっているのなら、いっそ死んでしまおうと思った。 「……」 「魔物……って知ってるかしら?」 「いや」  聞いたことのない単語だ。 どんなものなのか想像もつかない。
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