至高の仕事

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夢は必ず叶う。 じいちゃんの口グセだ。 そう、夢は必ず叶うんだ。 でも、叶えるには相当の努力が必要みたいだ。努力し続けるには執念が必要みたいだ。 そして、それらを持つには、成功を信じる“心”が必要みたいだ。 俺の夢かい? それは、魔法でメシを食うことさ!  薄暗い円い部屋。いや、厳密には円いのではない、部屋は丸い立体的な球体をしている。部屋の壁には、一面に奇妙な模様が描かれている。なんとも言えない不思議な雰囲気だ。  その中に、長いテーブルが一つある…というより、浮いているといった方がよいか。そのテーブルには三人の男がいる。三人のかっこうはバラバラで、三角帽子をかぶった者、スキンヘッド(刺青が施されているが)の者、もう一人は、ローブをかぶっていて顔はよく見えない。中年が一人、あとの二人は二十代後半のようだ。  三人はしきりに部屋にいるもう一人の男、青年に話しかけていた。 「……さて、それではそろそろ実技試験に入りましょう」  テーブルの真ん中に座っている、三角帽子の中年が言った。 「は、はい!」  青年は即座に答えたが、うわずったすっとんきょうな声をあげた。テーブルの三人は一瞬、睨みつけるような視線を青年に向けたが、すぐさま青年の行動に目をやった。  三人は、この時をいつも楽しみにしている。彼らにとって、若者が慌てて必死になるのを見るのが、一種の快感となっているのだ。  青年はポーチから何やら、チョークのようなものと、緑色の液体の入ったビン…エーテルと呼ばれる魔力を高める薬、それと分厚い本を取り出した。 「ふむ、準備はよろしいかな?」 「はい」  これらは魔術を行う上で最低限必要な物である。それ以外は、魔術によって道具が変わることがほとんどだ。そう、実技試験とは魔術儀式のことなのである。 「よろしい。それでは、その円錐の石器を使い、あの窓から見える塔を破壊して下さい」  そう言うや否や、三角帽子は、青年の足元にある円錐型の石器と、球体部屋の窓を指差した。
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