至高の仕事

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 声はしばらく部屋に中に反響していたが、それもやがて消え、堰を切ったように静寂がおとずれた。何も起こらない。テーブルの三人は、窓の外の円錐を見るがヒビ一つ入っていない。  ―失敗か?―その場の全員がそう思った矢先、三角帽子が異様にふくれていき…。  ボンッ!  強烈な爆発音が鳴り響いた。全員何が起こったかわからない。 「なんですか!? 何ごとですか!?」 「あぁ~~、帽子が、帽子が~~!?」  三角帽子の男がわめき散らしている。 「大丈夫ですか、導師どの!」  テーブルの二人は慌てて三角帽子の男によりかかった。  なんと、三角帽子が木端微塵になっているのである。  「大丈夫ですか!?」「お怪我はありませんか!?」など、何を言っているのかわからないくらいに言葉が飛び交っているが、三角帽子(だった)男は、「帽子が、わしの帽子が~…」などとわめきちらすだけである。  青年はポカーンとした顔でそれを見つめているしかなかった。 (なんでだーーー!?)  頭は真っ白である。疑問しか浮かばない。 「君、何をしたんだね?あの塔を破壊しろと言ったのだ、導師の帽子ではない!」  その怒号に、青年は我に返った。と、慌ててといってもマイペースに冷静に、儀式に使った道具などをチェックしだした。 「あ、一文字間違えた」  青年は魔法円を見てあっけらかんと言った。男二人の表情がゆがむ。 「出てけーーーーーー!!!」 「グハッ!!?」  蹴られたか、押されたかよくわからないが、青年は部屋の外に勢いよく飛び出ていった。  素朴な街並み。西洋風の家々が並び、極たまに、浮いている家もある。空を見上げれば、見渡す限りの青空。その空には飛空挺が飛び交っていた。街行く人は皆、丈の長いローブを着ている。  この街、マーリアル・ブルネットは魔法使いの街として有名である。魔術の研究、開発、技術・道具の輸出、学校まである。魔法使いにとっては、メッカのような街なのだ。この街で魔法の仕事をすることは、人生の勝利をも意味する、とまで世界中の人々は思っているほどだ。この青年、アルディ・バリャディースも魔法で仕事をすることを目指す一人なのだ。  アルディは、歩きながらカバンから何かの銅像のようなものを取り出した。細かい装飾が施されており、奇妙な形の台座のてっぺんには水晶球が付いている。
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