至高の仕事

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「もしもーし」  アルディがそう言うや否や水晶から淡い光が出てきた。と、光は人の形を成していき、やがて女性の形となっていった。出てきた女性は髪はパーマ、エプロン姿で体型はわりとやせており、年は四十代後半か。典型的な“お母さん”だ。お母さんは挑戦的でいて不安なような複雑な表情でアルディを睨んでいる。 「で、どうだったの?」  お母さんが口を開いた。声を荒げてはいるが、怒気は感じられない。よくと通る綺麗な声だ。この銅像のようなものは、“携帯魔道話”と呼ばれるもので、魔力によって、同じ携帯魔道話を持つ人間の姿と音声を出現させ、遠くにいる人間とも会話やコミュニケーションがとれるというものだ。仕組みは、使っているアルディもお母さんもよくわかっていない。  お母さんの声に怒気がないのを見かねてアルディは返答した。 「だ、ダメだった。はははははは」  お母さんの顔が見る見るうちにしかめていく。 「んもーーー、なんでダメなのさ!あんた向いてないんだよーーー!」 「だ、だってしかたないだろ!? ダメだったんだからよ!」  口論が始まった。道を行く人はなんだなんだとアルディ(達)を見やる。バカでかい声で二人は言い争っている。が、しかし、お母さんが優勢なのは言うまでもない。 「だから、もう決めらんないんだったら、家に戻ってきな!」 「んな、なに言ってんだ! それだけはごめんだ、実家戻ったら、魔術士になれないだろ!」  口論は核心の部分に触れていった。アルディは二年前工学の街の実家から、魔術士になるべく、マーリアルの街に来て中央魔術専門学院に入学した。無事に学院は卒業できたのだが、卒業後就職活動をするも、まるで採用をいただけていないのだ。マーリアルで一人暮らしの彼にはもうお金はない。まずは何でもいいので仕事を決めるしかないのだが、アルディにとって魔術士になれないことは、死んだも同然のことであった。 「まったく…、職種選んでなければとっくに決まってるかもしれないのに」 「…ぐ…」  口論の勝敗はついたようだ。彼はもうグウの音もでない。
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