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やっとのことで蔓を登り切ったアルディは、店の床に空いている穴から中に入った。蔓は店の天井まで伸びている。アルディが店員と目が合うと、店員が苦笑いをした。店員も、店長の趣向にはあきれているようだ。
アルディはさっそく、頼まれたハーブセットを探し始めた。ほどなくして、目的のものを見つけたらしく、バスケットに入っているハーブを、バスケットごと取って、レジへ向かおうとした。
彼はふと、ハーブセットのとなりの商品コーナーにが目に入った。
そのコーナーは、ビンの中に色々なオブジェクトや何やらが入っている、インテリアコーナーだ。彼は、こうった“小物”好きで、よく、そのコーナーに入り浸ったり、衝動買いをしたりしていた(そのたびに置く場所がないため、物置にしまわれるのだが)。
いつもは楽しく、そのコーナーを見て楽しむのだが、今日は違った。
その商品の中に一つだけ、“生き物”が入っているビンがあった。
“妖精”である。
体は、丸みを帯びて小さく、顔は半月形で、口は無い。異様に目が円くて大きく、周りをキョロキョロ見ている。アルディはそれを見て不快になった。
(インテリアに妖精を使うなんてありえねぇ!)
アルディはそう強く思った。
妖精は不老不死である。どこから現れ、どこに行き、死に、生まれるか、現在の魔法学でも全く解明できていない。
確かに不死であり、見た目はかわいいが、こうして生きている者をインテリアや道具に使うのがアルディには許せなかった。生きているのならば、自由であるべきだ。そんな想いが彼の頭をよぎった。
アルディはちょいちょい、と手を動かし、店員を呼んだ。
「これ、どこの商品なの?」
尋ねられた店員は、ちょっとお待ち下さいと言い一旦レジに戻り、なにやら大きなリストブックのようなものを眺めたあと、アルディの元に戻ってきた。しばらく妖精入りのビンを眺めて裏側を見たりした。
「えーと、魔導社ドルディアというところですね」
「げ……」
アルディはその名を聞いてゾッとした。なんと、彼が先ほど試験を受けた社の名だったのだ。落ちてよかったな、など勝手に自解した。こんな商品作るところに入らなくてよかった、と。落ちた原因は自分だというのに、なんて都合のいいことだろう。
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