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「ネット世界の充実の裏で、現実世界での対人関係が稀薄になってゆく昨今。
急激に増え続けているのが、『兎症候群患者』だ。
兎症候群とは、孤独感に苛まれ、死に至る病。
潜伏期間に個人差はあるが、発症後の死亡率は80%を超える。可笑しいと鼻で笑われるだろうが、これが疲弊し切った現代社会の実情だ。」
テレビから流れるアナウンサーの言葉を尻目に
俺は紫煙を天井に登らせた。
テレビなんて、どうして買ったんだろう。
見ても関心が長続きしないのに。
それも兎症候群の症状らしい。
ギシ、とベッドが軋む音がして
背中に人の体温が触れる。
「起きたのか、真知」
問いかけても返事は帰ってくることはない。
彼女はただの人型の薬だから、
兎症候群患者に与えられた人型の薬。
1人じゃなければ、人の体温を感じれば、
死なないとでも思ったのだろうか。
俺は真知の真っ白な腕を掴み噛み付くようにキスをした。
彼女の唾液は、とても甘い。
「....っ」
真知から熱い吐息が溢れる。
ずっと、こうしていたい。
甘い甘い君をずっと味わってたい。
俺は目を細めて真知を抱きしめた。
(彼女に流れる体液が精神安定剤だってことを、俺はまだ知らない)
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