僕のおとしもの

3/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
歩行者が溢れる夜の道。表の世界で生きる人、裏の世界で生きる人…そんなくだらない生物達に呑み込まれそうな、ひとつのペンダント。 ハート型で金色だ。すれ違う人々の中、太一は立ち止まった。重い腰を曲げ、ペンダントを手に取った。 ペンダントには小さなボタンがあり、太一はそのボタンを押した。何故か、押さなければならない。 そんな気がしたのだ。 ボタンを押すと、ハート型の蓋が開き、その形に切り取られた写真が顔を出した。笑顔が三つ…家族の写真だ。父親と母親に挟まれ、眩しすぎる笑顔を見せる真ん中の女の子。 見覚えなど無かったが、太一はしばらく、その写真を見つめていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!