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その手紙を書いた人物が、写真の真ん中で笑う彼女だと分かった時、太一は外に飛び出していた。
自分でも分からない…自分を守るため、自分の幸福のために平気で人を傷つけてきた。
それなのに…何故だろう?何故、僕の足は彼女を追いかけているのだろうか。
いくら夜空に…自分の汚れきった心に問いても、答えなどは出なかった。
焦らせるように雨が降る。右手に握られたペンダントと、左手に握られた手紙が、雨に濡れていく。
鴨津高校の屋上で私は死ぬ。
ありがとう。お母さん、お父さん。
雨に濡れた手紙が、その文字を浮かび上がらせた。どうやら特殊な塗料で書かれたようだ。自分が死んだ場所が分かるように…そしてなにより…普段なら恥ずかしくて言えない感謝の言葉を、そっと伝えるように。
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