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「鴨津高校…」
急げ、急ぐんだ。彼女は、彼女だけは死なせてはならない。
死ぬのは…自殺するのは…
自分だけで十分だ。
いつしか太一の頭に‘ペンダントを返さねばならない,という命令は消えていた。
代わりに生まれたのは‘このペンダントを彼女に返したい,そういう自分の意志だった。
もう足は勝手に動いてはくれなかった。
それでもいい。
暗闇に浮かぶ学校。やはり少し怖かった。
とりあえず、玄関の扉をひとつずつ開けてみた。
左端から右端まで五つの扉がある。
「くそ、開いてくれよ!!」
一つ目、二つ目、三つ目…どんなに引っ張っても、押しても、びくともしない。
「頼む…」
目をつむり、四つ目を力強く押した。すると勢いよく扉は開き、また太一は走り出した。屋上へ…彼女のもとへ。
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