02.上司の男

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背後から、椅子ごと押さえ込まれ、紗奈は息を飲む。 「ねぇ、紗奈。それは、終わってるとは言えなくない?」 「………言えます」 「僕はそう思わないけど?」 マウスとは反対の手が胸元に忍び寄る。 ブラウスのボタンを一つずつ外していく要に、紗奈は震えた。 「七年だ。その間、何人の男と愛し合った?」 「………関…係……な…」 「あるよ」 耳裏を舐められ、ゾクリと肌が泡立った。 「また。イチから教え込まなきゃいけないね」 外れたボタンの隙間から、要の手が侵入を果たす。 「……な……にを…」 「ふふ、わかってるくせに。……ああ、ほら、こんなにさせて。感度に変わりないのは幸いだね」 身体が自分を裏切り、甘い声が漏れる。 「七年ぶりだからね。ゆっくり味わいたいから、ここではほんの少しだけ、僕を思い出させてあげる」 「………やめ…っ」 「やめて? ふっ。そんな事、少しも思ってないくせに」 触れられ。乱される。 拒まない身体は、要が与える熱を容易に受け入れる。 ―――………また、……始まるの? あの、淫らで地獄のような日々が。 ―――……それは、……嫌。もう、あの頃の私じゃない 七年の月日は自分を強くしたのだ。 ふと気づくと、椅子が反転され、要と向かい合わせになっていた。 カチャカチャと、要がベルトを外す音に我を取戻した。 このままでは、また、あの闇に囚われる。 「………い…や」 『――紗奈、綺麗だよ』 フラッシュバックする、要との過去。 捕らえようとするその手から逃げる為、紗奈は目の前の男を、 ――――蹴った。 .
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