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「ぅん…」
厳は目を覚ました。
そして見覚えの無い天井に疑問を覚える。
「僕は…」
まだハッキリしない頭をフル稼働して記憶を呼び覚ます。
「船でパトロールしている時に船体が転覆して…」
「目が覚めたかい?」
厳が記憶の整理をしていると女性の声が聞こえた。
「あの、あなたは誰ですか?それにここは…?」
一番疑問に思っていることを厳は口にする
「人の名前を聞く前に、自分も名乗るものだぞ。私は庵 美実(ハルミ)だ。」
「庵、さん…俺は正者 厳です。あの、ここはどこですか!?」
厳が尋ねると
庵はあるものを渡す。
「あの、これは…?時計のようですけど。」
それは一見すると何の変哲もない時計のように見えるがよく見ると普通のと微妙に異なる。
数字が二個刻まれている。下のは進んでいるが
上のは下のが進むと減っている。
「その時計はな色々な呼び名があるが『ノーマイントウォッチ』が一般的だ。
私は『ノーバーウォッチ』と呼んでいるがな。」
庵は時計の説明をし始めた。
「ノーマイントウォッチ、か…」
「この街の住人はみな、これを付け生活している。この街の名前は【チェレステ】時間がお金の街だ。」
「時間がお金の街…」
庵の言葉に
訳が分からない、
と言いたげな厳。
「街のことは和と薫にでも聞け。今は買い物に行って貰っているが帰ってきたら案内させる。」
「…ありがとうございます。」
庵にお礼を言う厳。
「あの。もし、な話ですけど、ここの数字が0になったら…?」
「それはその時教えてやる。だからせいぜいここで生きろ。そして、仲間達もその残り時間で見つけろ。」
ま、無理だと思うがな
と言う庵に
「やってみなければ分からないですよ!!」
と厳は返す。
「いい事を教えといてやる。」
庵が言った『いい事』は厳にとっては悪い知らせだった。
「この街に来た時点でお前はここに囚われた。
厳、おまえはこの街から一歩たりとも出ることはできぬ。」
「そんな…」
それじゃあ仲間を探しに行けないと落胆する厳。
「出たいと思うなら方法が1つだけあるぞ。」
厳は希望の目を庵に向ける。
「その数字を早く0にすることだ。そうすればここから出られるぞ。」
先ほど聞いた時は渋ったのに今は0になったらどうなるか説明をしてくれるのか、と思う厳。
「それは即ち“死”と言う意味だがなアハハッ!!」
庵は高笑いをする。
そして先ほど見せた希望など当に失ってしまった厳。
「和と薫が帰ってきたな…。」
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